【働き方改革】建設業界の年間休日の現状と改善への取り組み
建設業界は、昔から「休みが少なくキツイ」と言われることが多い業界です。
しかし、近年では働き方改革の進展により、建設業界でも年間休日が増え、働きやすい環境が整いつつあります。
では、実際のところ、現在の建設業界はどの程度働きやすくなっているのでしょうか?
本記事では、建設業界の年間休日数や働き方について詳しく解説し、現状を明らかにしていきます。
建設業界の平均年間休日は?
労働基準法には、労働者を保護する目的で休日に関する決まりがいくつもあります。
企業が休日を設定する目的は、労働者の心身の健康を守り、生活の質をアップさせ、ひいては仕事へのモチベーションを上げて生産性を高めるというような目的があります。
まずは、労働者が現在どれだけ休日を確保できているのかについて解説していきます。
法定休日と所定休日とは?
建設業をはじめ、すべての業界や職種には「法定休日」という決まりがあります。
法定休日とは、労働基準法に基づき、企業が労働者に対して週に1回、または4週間で4回の休日を与える義務があるというものです。
これにより、労働時間が1日8時間、週40時間以内に収まる場合、年間の休日日数は最低でも105日以上確保しなければならないとされています。
法定休日は、どの曜日に設定しても問題はなく、週ごとに異なる曜日に休日を設けることも可能です。
例えば、接客業では土日に勤務し、平日に休みを取るのが一般的ですし、不動産営業や施工管理などの業種では、水曜日を休日にすることが多いです。
逆に、平日の5日間を出勤日とし、土日祝日を固定で休日とする業種も存在します。
このように、企業は基本的に週に1回以上の休日を設定する必要がありますが、労働基準法では週の労働時間を40時間以内に収めることが求められています。
この規定を守るためには、法定休日以外にも休日を設定する必要があります。
こうした、労働時間上限を守るために設けられる休日は「所定休日」と呼ばれます。
年間休日の平均は?
厚生労働省が実施した「令和5年就労条件総合調査」によると、2022年の1年間での労働者1人あたりの平均年間休日数は115.6日(令和4年調査115.3日)です。
企業規模別 | 労働者1人あたりの平均年間休日数 | 1企業あたりの平均年間休日数 |
1,000人以上 | 119.3 | 116.3 |
300~999人 | 117.3 | 115.7 |
100~299人 | 113.1 | 111.6 |
30~99人 | 111.2 | 109.8 |
令和5年調査での全体平均 | 115.6 | 110.7 |
企業規模が大きくなるに伴って、労働者1人あたりと1企業あたりの休日数は増加していますが、多くの労働者は年間120日前後の休日を確保している状況です。
この年間120日前後の休日には、法定休日や所定休日に加え、年末年始や夏季休暇、ゴールデンウィーク、そして祝日の休みも含まれています。
しかし、年間の休日日数は業種や職場環境、企業の風土によって大きく異なります。
たとえば、一部の企業では労働者が年間休日を多く確保できるケースもありますが、反対に、十分な休日を取れない状況にある労働者も存在します。
このように、年間休日の確保状況は個々の職場や業界によって大きく変わることが多いのです。
建設業界の平均年間休日の現状は?
年間休日日数は、業種や企業によって大きく異なります。
特に建設業界では、プロジェクトのスケジュールや現場の都合により、休日が少なくなるケースが多く見受けられます。
一般的な業種では、年間で120日前後の休日が確保されていますが、建設業界における平均の年間休日日数は約105日と、他の業界に比べて少ない傾向があります。
特に、製造業や工場の技術職、施工管理技師などの職種では、年間休日がさらに少なくなることが多いです。
これらのポジションの労働者の中には、年間休日が100日に満たない場合もあります。
建設業界において、法定休日と所定休日を合わせて年間105日以上の休日を確保する必要がありますが、現実には休日出勤などの影響で、この最低ラインを下回るケースもあります。
このような状況は、建設業界の働き方や休日日数に対する改善が必要であることを示しています。
建設業の休日が少ない原因は?
建設業界の休日が少ないとされる原因を解説していきます。
人手不足と年間休日の関係
建設業界で年間休日日数が少なくなる大きな理由の一つが、深刻な人手不足です。
現場で働く従業員の多くは高齢者であり、若年層が非常に少ないという現状があります。
この背景には「建設の仕事はきつい」「給与が安い」というイメージが根強く残っていることがあり、結果として建設業界を目指す若手が減少しているのです。
慢性的な人手不足が続くと、必然的に一人当たりの仕事量が増加し、休日を取りづらくなります。
このような状況が続くと、建設業界は「ハードな業界」というイメージが一層強まり、さらに人材離れが進んでしまいます。
これにより、人手不足が解消されず、現場の労働環境がますます厳しくなるという悪循環が生じています。
この悪循環が続くと、仕事が回らなくなったり、大きな事故が発生するリスクが高まったりする可能性もあります。
そのため、人手不足に対する早急な対処が建設業界全体で求められています。
企業風土と年間休日の影響
建設業界の現場には、「長時間労働が当たり前」という文化や風土が根強く残っています。
このような職場環境では、ベテランの職人たちが「休みを取ることに抵抗がある」と感じ、自ら進んで休日数を減らして働くケースも少なくありません。
特に、体育会系の雰囲気が強い職場では、休日を減らして働く姿勢が評価される傾向があります。
このような環境では、働き方改革の推進が難しく、結果として全ての労働者がハードな働き方を強いられることになってしまいます。
この企業風土が続く限り、労働者の健康やワークライフバランスが損なわれるリスクが高く、建設業界全体の魅力が低下してしまう恐れがあります。
そのため、こうした風土の見直しと、働きやすい環境づくりが急務となっています。
日給制が年間休日に与える影響
建設業界には、月給制や年俸制で働く正社員だけでなく、日給制で働く労働者も多く在籍しています。
日給制の労働者は、働いた日数に応じて収入を得るため、休みを取るとその分収入が減ってしまうという心配があります。
このため、日給制で働く多くの労働者は、安定した収入を得るために、休日を減らして働く傾向があります。
収入を確保するために、休暇を犠牲にするという選択を迫られることで、年間休日が少なくなるのが実情です。
日給制の影響で、建設業界全体の年間休日数がさらに低くなる可能性があるため、労働者の生活や健康に対する配慮が求められています。
このような状況を改善するためには、日給制労働者の働き方や待遇に対する見直しが必要です。
スケジュールの都合と休日出勤の影響
建設業界の仕事は、天候に大きく左右されるという特有の問題を抱えています。
雨や雪、台風などの自然災害の影響で、工事がスケジュール通りに進まないことが頻繁に発生します。
しかし、工事を受注する際には、厳密なスケジュールが取り決められるため、予定通りに作業が進まないと大きな問題になります。
特に、天候の影響で作業が大幅に遅れた場合には、多大な損失を被るリスクが高まります。
このような状況下で、工事を予定通りに進めるためには、休日出勤や長時間労働で遅れを取り戻す必要があります。
結果として、建設業界では年間の休日日数が減少し、労働者にさらなる負担がかかることが少なくありません。
スケジュールの都合による休日出勤が常態化することは、労働者の健康やワークライフバランスに悪影響を及ぼす可能性があるため、適切な対応が求められています。
建設業の休日を増やすための取り組み
建設業界では、現在働き方改革が進んでおり、今後さらに働きやすい環境が整うと期待されています。
例えば、国土交通省は2024年4月から時間外労働の上限規制を建設業界にも適用しています。
また、週休2日制を適用する公共工事の拡大も進められています。
これらの働き方改革が進展すれば、建設業界で働くすべての人が、より安心して仕事に取り組めるようになるでしょう。
しかし、国が働き方改革を推奨しただけでは、現場の雰囲気や文化がすぐに変わるとは限りません。
働きやすい環境を実現するためには、各企業が積極的に職場環境を改善し、変化を促すことが不可欠です。
これから建設業界で働こうと考えている人は、週休2日制の定着や有給休暇取得率の向上など、休日を増やすための取り組みを積極的に進めている企業を選ぶことが重要です。
このような企業であれば、より充実したワークライフバランスを実現できるでしょう。